4話



「・・・死んでないよ。私。」
「そんな風に思ったんじゃないよ。大きな日本人形かな?って思ったんだ。」
 ちょっとスネた顔でつぶやいてから、私の顔を見上げた瞳が、やっぱりキラキラ光っている。
「ちょっと、そば寄っていい?」
 そんな事言われた私は、とても戸惑った。
 返事できずにモジモジしている私をどう思ったのか。彼はスーと近寄ってきて、
「いつもそんな恰好をしてるの?」
 と聞いてくる。
(着物を着ていたから。そんな風に思ったの?)
 私はそう思ったわ。
 その時私は、白地に色とりどりの金魚が泳ぐ図が描かれている着物を着ていたから。
 真っ赤な帯は、お手伝いさんの門田さんによって、背中一面に広がる形に織り込まれてあって・・。
「お母さんが、いつも着てなさいって言うの。」
 そう答えると、彼はとても不思議そうな顔をする。
「苦しくない?」
「慣れたから・・。」
 それ以上、言葉が出なかった。なぜなら、彼がもっとそばに寄ってきて、私の髪の毛を触ったから。
「きれいだよね。その髪・・。ツヤツヤ光ってる・・。」
 うっとりつぶやきながら、彼が私の視線にやっと気づいて、
「ごめん。名前、言ってなかったね。俺、野々村彰彦(ののむら あきひこ)って言うんだ。隣に最近引っ越ししてきたんだ。よろしく。
 えっとねえ・・小学2年生で8才になったとこ。
 君の名前は?」
「私は沢尻綾(さわじり あや)あなたと同じ8才よ・・・・。」


 それがアキとの初めての出会いだったね。