第四章
『失くした鍵』第7話







・・・気がついた時には、すべてが終わっていた。
 凉、土の上で横たわる瑠香を、ボンヤリ見ているところでハッとなったのだ。
「瑠香!」
 駆け寄って、彼女を起こそうとして、その瞳はすでに命の炎が消えてしまっていた。
 それを目にした瞬間。
 ある映像が、凉の中で鮮明な映像となって浮き上がってくる。
 かつて、屋根裏部屋で起った出来事の一部始終を・・・。
 その時も、彼女は瑠香と同じように、命の炎を絶やしてそこに横たわっていた。
 屋根裏部屋から落としたのは自分・・・。
 裕子も、彼女の大切な娘の瑠香も・・・。
 凉は半狂乱になった。
(俺、何てことをしてしまっているんだ!)
 すごい後悔をするが、瑠香は生き返ってはくれない。
「瑠香!生き返ってくれ。!!」
 半狂乱に泣き叫ぶ凉の姿を、耕太郎が見つけた。
 ただちに救急車が呼ばれ、病院に運ばれるも、瑠香の死亡確認がとれただけになってしまった。
 瑠香の死は、事故だと処理されるが、事件性も考えられ、解剖に回された。
 ほどなく妊娠していた事が判明する。
 父親は誰なのか、河田家の中でうわさになるが、結局は誰だったのか、わからずじまい。
 瑠香は荼毘にふされ、彼女の死の真相は闇の中へ。
 事故と処理されたのを納得しないのは、耕太郎だった。
 廃人のようになってしまった凉の様子がおかしいと、耕太郎が問いただしてきて、凉は瑠香の件だけは白状した。
 自分自身がゆるせず、耕太郎の憎しみの感情をナイフがわりに、自分を痛めつけてゆく。
「自首しろよ!」
 問いただす耕太郎に、
「河田家の次期当主が、そんなことできると思うかい?」
 耕太郎の目前で、冷たく言い放つ凉。
 心の中では相反する気持ちで、荒れ狂っていた。自首して罪を償いたいという思いの反面。自首したら、それこそ母の愛情を失ってしまう。という恐怖とが・・。
「警察に行ってやる!」
 息まく耕太郎に、
「警察だって動いてくれるかな?
 河田家は、政界だけじゃない。警察の上層部にも、顔が聞くんだぜ。無駄な事だ。」
 冷静に言い返されて、耕太郎は青ざめる。
「お前、いつか殺してやる!」
「いつでもどうぞ。殺せるものなら・。」
 首をしめてくる耕太郎だが、最後の最後でとどめをささない。
 凉の瞳の中に、殺されるのを待つ気持ちに気付いたからだ。
「くそー!
 思い通りに殺してやるものか。償うことも許さないからな。
 苦しめ!生涯かけて苦しめ!」
 心底からの憎悪の感情をぶつけて耕太郎は離れてゆく。


・・・夢で、裕子と瑠香を見る。


 凉が手に掛けたというのに優しい彼女ら。
 会いたいと思うのに、もう会えない・・・。


 感情のセーブがきかなくなっていた。
 圧のたかまりは、学校で処理するようになってゆく。
 仲の良かった友達を標的にして陰湿ないじめを行い・・・。
 クラス一美少女の平野里奈と体の関係を持ち・・。
 そして、家の車を勝手に持ち出した凉は、ハイスピードで走らせて人をはねた・・




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